それまでも一条は、いつも答えは「実験」の中にあると考えてきました。
地震の脅威に向き合うならば、理論上の数値だけに頼るのではなく、リアルに家を揺らしてみるのが、何よりの“確証”となるはずだからです。
1985年には、杉山教授とのご縁がきっかけとなった東京大学をはじめ、数々の大学や研究機関と共に、実際の家を建て、地震時にかかる水平荷重をかける「実大実験」をスタート。時には3階建ての家屋の横に鉄骨の櫓を建て、真横から大型のジャッキで圧力をかけ、建物の変形具合を検証することもありました。
ところが、
先の阪神・淡路大震災で「それでも足りない」ことが分かってしまった。
どれだけ建物自体が無傷であれ、家の“中”が守られてこその「地震に強い家」。その答えとなる一つが、地震の揺れを受け流すことで建物自体の揺れを抑える「免震」という構造でした。
当時、免震という技術自体はすでに存在はしていました。しかし、その導入には1000万円以上の費用がかかり、一般のご家庭で採用するにはあまりにも高額なものでした。「普及しなければ、どんな立派な技術であっても意味がないじゃないか」一条が目指すのは “乗用車一台分”で搭載できる免震。それには、独自のアイデアで新たな方法を考える必要がありました。技術や構造は、“複雑であれば、複雑であるほど良い”というわけではありません。精密なものは、かえってメンテナンスに手間がかかったりもします。コストと長期の性能の維持を考えると、いかにシンプルな構造にするか、ここが重要でした。
実験に次ぐ実験。揺らして、建てて、また揺らす。気が遠くなるほどの回数の検証を繰り返し、ようやく完成したのが、震度7相当の揺れでも、家具の転倒やモノの落下をも防ぐ一条の免震住宅だったのです。