災害ボランティアでのリーダー経験、教育という仕事。
共通するのは限られた時間で結果を出そうとする意志。
飯坂 友博TOMOHIRO IISAKA

北海道出身の飯坂は、東京の大学を卒業後、営業として地元の北海道へ。その後本社の教育部へ異動しました。大学時代には災害ボランティア団体のリーダーを経験した飯坂。そこには現在の仕事に共通する物事への向き合い方がありました。
大切にしていること相手の考えや悩みを真摯に聴き、相手を知る。
まずは、それが大前提だと思う。
4年半、北海道で営業の経験を積んだ後、飯坂は本社の教育グループへと異動しました。「営業の仕事は楽しかったので迷いもありましたが、将来的には責任のある役職に就きたい、様々な経験を積みたい、という想いもあり、期待に応えられるようやってみよう、と思いました」。
飯坂が担当しているのは、若手社員を対象とした営業成績向上のための研修です。各営業所単位で行うOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)とは異なり、短期間で研修成果を上げることが求められます。
「一般的に研修と聞くと、営業ノウハウやさまざまなスキルを身につけるためのトレーニングなどを想像するかもしれませんが、僕は、まず信頼関係の構築から始めます。相手が何を考えていて、何に悩んでいるのか、徹底的に話を聴く。とにかく、相手のことを知るところからですね。僕が話すこと、伝えることを信用してもらわなければ、どんな価値のあるアドバイスでも、相手の耳には届きません。具体的な研修を始めるのは、徹底的に対話をして信頼関係を築いてから。貴重な研修期間を無駄にするわけにはいきませんからね」。
一方で、普段一緒に仕事をしていない相手から悩みや課題を聞き出し、解決していくというのは、なかなか難しいことです。
「日頃の様子を知らないからこそ見えるものってあると思うんです。営業現場の上司や先輩だと、距離が近すぎるために、見えないこと、気づけないことがあるんじゃないかと。単純に言いにくい、というのもありますしね。だから、僕は適度な距離感を保ちながら、客観的に指摘するようにしています。僕との研修を通して若い社員たちが新しいチカラや考え方を持って現場に戻り、活躍してくれると嬉しいですね」。
原点期限内に最良のパフォーマンスを発揮する。
今にも生きている災害ボランティアでの経験。
大学2年から4年まで、災害ボランティアに参加していた飯坂。その時の体験、経験が限られた時間で研修を行う今の仕事にも生きていると言います。
「大学1年の終わり頃に東日本大震災が起こりました。東京でも感じた大きな揺れ。テレビに映る、まるで映画のCG映像のような津波の様子、濁流に飲み込まれていく家。これは本当に現実に起きている出来事なのか?と目を疑いました。そして、日にちが経つほど被害の大きさが分かってきて、居ても立っても居られない気持ちでボランティアに参加しました。ところが、いざ被災地に行ってヘドロに覆われた町を目の当たりにすると、全身に恐怖が走りました。本音を言うと『もう来たくない』と思ってしまうほどの衝撃でした」。
被災地の悲惨な光景に大きなショックを受けた飯坂ですが、その後も月1回のペースで足を運び、支援活動をしたそうです。
「1回目に行った時はリーダー役の人の指示に従い、園芸用のスコップでひたすらヘドロを掻き出すだけでした。それでも、『自分も現地の人のために貢献できることがある。復興の力になりたい』と思い、継続して参加したんです。何度か行くうちにボランティア団体の方たちとの関係性も深くなり、徐々に自分の裁量でボランティアスタッフに指示する機会も増えました。現地では実際に被害に遭われたお宅へ伺うのですが、被害状況はさまざま。それに被災者の方の心情もみなさん同じではないので、まずは『何をお手伝いしたらいいですか?』とお話しするところから始めなければいけません。何をするか決まれば作業計画を立案し、指示を出して実行する。ボランティアスタッフはさまざまな団体から現地に派遣されるのですが、「誰が」「どこで」「何をするか」を明確にしないと、せっかくの人手が無駄になってしまうんです。スタッフはいるのに、現地で暮らす人のために何もできなかったなんて、本当にもったいないし、自分としてもすごく悔いが残る。だから限られた時間のなかで最良のパフォーマンスを出せるよう考え、陣頭指揮をとっていました」。
4年生の時にはリーダーを任されるようになった飯坂は、ボランティアに参加するなかで大きなやりがいを感じていたと言います。
「ひとつは、現地の人の役に立っているというやりがいです。ただ黙々と作業をするわけではなく現地の人とコミュニケーションをとりながら進めるので、だんだんと心が通ってくる。その上で喜んでもらえるのは嬉しいですね。もうひとつは、自分自身が成長していると感じられたことです。限られた時間のなかで現地の課題や復興に対してチームでどう対応するべきか、どのように時間配分や役割分担をすればベストな結果になるか考え、実行する。ボランティア以前はそのような経験や考え方をする機会がなかったので、成長している感覚がありました」。
きっかけ決めたことは確実に実行する。
それが、仕事もプライベートも充実させるコツ。

限られた時間で結果を出す。その飯坂の考えは、仕事のみならず、プライベートを充実させることにも生きているようです。
「現在も、北海道で住宅営業をしていたころもそうですが、仕事とプライベートを両立させることは、自分の人生にとっても、仕事で結果を出すためにも重要だと思っています。しっかり休日を楽しみたいからこそ、仕事も頑張る。そう決めたことがきっかけで、スムーズに仕事を進めるコツを掴みました」。
休日を充実したものにするために、飯坂は目標を細かく決めて仕事に取り組んでいたと言います。
「特に営業の仕事は、打ち合わせなどのアポイントはお客様の予定に合わせることが多く、すべてを相手に委ねてしまう受け身の姿勢だと、休日が不定期になってしまいます。そこで、『この日は絶対に休みを取る』と決めたら、事前にお客様のご予定を確認して仕事の段取りをつけ、確実にスケジュールどおり進められるよう、先手を打って対応していきました。やるべきことを順序立てて取り組み、結果も出し続けました。明確な目標を立てて仕事に取り組めたのは、災害ボランティアでリーダーとして効率的な作業を先導した経験も関係していたと思います」。
目指す結果を見据えて、期限内に最良のパフォーマンスを発揮することで、仕事はもちろん、プライベートも充実させる。結果にこだわる、飯坂のパーソナリティを強く感じました。
ひとこと
僕は営業から教育に異動する際、上司に「自分で選んだ道を、正しいものにできるのは自分だけ」とアドバイスをもらいました。自分に合う、合わないも大事かもしれませんが、踏み出した道に自分を適応させていくという考え方も大事ではないでしょうか。自分が変わっていくことで、開ける未来も絶対にあると思います。